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それぞれの夜 『明美』 の続きです。
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「おはようございます」
あたしが更衣室で着替えていると、外の方で声が聞こえた。
この声は…明美さんかな?腕時計に目をやるとちょうど午後4時30分。明美さんはいつも時間に正確だ。あたしはいつも遅れがちで、だいたい明美さんの方が先に更衣室に入ってる。今日はたまたま学校が早く終わり、あたしの方が早かった。
更衣室の扉が開き、明美さんが入ってきた。
「まどかちゃんおはよ」
「あ、明美さんおはよぉございまぁす」
うわぁ…やっぱりいやだなこの人。あたしはとびっきりの笑顔を明美さんに向けながらそんな事を思った。
あたしは彼女が苦手だ。ただ、漠然と苦手。何をされたわけでもなく嫌なことを言われた訳でもない。最初バイトで明美さんと一緒になった時からなんとなく『この人は苦手なタイプだ』と体がピンと反応していた。
何か一つあげるとしたら、彼女の目だろうか。彼女の釣りあがった目で見つめられるとどうしていいかわからなくなる。話をしている時、彼女は人の目をじぃっと見る。まるで言っている事が真実なのかどうかを見極めているかのような、目。
会話が途切れるのを恐れて私は話しかけた。
「明美さんって、いつも自転車で来てますよねぇ?家近いんですか?」
「近いよ。」
「あ、そうなんです…」
か…と、言い終わらないうちに彼女はあっという間に制服に着替え更衣室を出て行ってしまった。
…なにあれ。せっかくこっちが気ぃ使って話しようとしてんのにっ。
まるでまだ着替えてるあたしがノロマみたいじゃん。感じワルッ。
あたしは思いっきり鏡に映った自分に向かって口をとがらせた。
すごく不細工で、可笑しくて独りで笑ってしまった。
私は時刻を確認する。
どうせバイト先までの短い距離だ。身なりなんて気にしない。テーブルの上に昨日置いたままにしてある黒色のゴムを手に取り二の腕辺りまである長い髪を鏡で確認しながら後ろで一本にギュッと束ねた。髪の毛が引っ張られたせいで元々細くてつり目がちな目が更に釣り上ってしまった。
私は自転車のハンドルをぎゅっと握った。
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